13時予備校の恋(33)
自信の表情だ。「言いたいことはしっかりと言わせて
もらいますので」神様のお墨付きを貰ったかのように。
あのね、あなたが今まで遊んできたことは知っているわ!
洋子の目の奥に、ブルースリーのようなメラメラと
燃える怒りの炎がチラリと見えた。
「女性のこと、お酒のこと、噂は耳に入っているから」
「いや、ちょっと待ってくれ」私は心の中で叫んだ。
だれ(女性)と付き合おうが、それが一人だけか、
同時に何人か、またはビール、ウイスキーを飲もうが、
ウイスキーボンボンを毎日食べようが、なんだという
のだ。そんなことは、わたしの勝手ではないか。
ましてや、洋子と出会う前の出来事(過去)である。
そう思ったが「余計なお世話だ!」と言わなかった。
女性の美は、男性の憲法(人生)を改正する。
わたしは両肩を前屈みにして、謙虚さを装った。
ミスター謙虚。心が躍る称賛ではないのだから。
付け焼刃の謙虚さだったが、功を奏した。やって
みるものだ。洋子は意図的に顔から険しさを消した。
優等生の顔に戻した洋子は、優等生的に話し始めた。
「具体的にどういう遊びをしてきたか、どういう女性
と付き合ってきたか、そこまでは詳しくは分からないわ」
楊枝入れから1本抜き取る時のように、そんなことは
どうでも良いのよ!という顔をして洋子は話を続ける。
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