KAZUの完全復活を目指して

平成23年1月1日元旦の午前1時 年越しJOGの途中で転倒して大怪我をした。 大腿部と手首の骨折〜救急車の搬送〜2回の入院と手術を経て2月9日に退院。 そして退院後のリハビリ通院は79回をもって、平成23年6月29日に終了した。 さぁこれから、ここから、どこまで出来るのか、本当に復活(完全)出来るのか? 本気でヤルのか、情熱を注げるのか、そして過去を超えられるのか? 質問と疑問に対して、正々堂々と、決して逃げずに、答えを出してみよう。 こういう人生を、こういう生き方を、思い切り楽しんでみよう。 KAZUさんよ、タイトルに負けるなよ!

2019年06月

13時予備校の恋

13時予備校の恋

 

「今日は買物しなくて良くなったの」と言い、三

日月みたいに怪しい笑顔を意味ありげに浮かべた。

少し憎たらしいけど可愛いと思った。「(宿題はな
かったのに)宿題終わったわ。お母さん、おやつ
頂戴よ!」しれっと嘘を言う小娘のようだった。

 

彼女の妖艶な表情を目の当たりにして、わたしは
少しうっとり、少し油断をした。餃子とビールの
ように、うっとりと油断は男の定番メニューだ。

 

そのとき、彼女の顔は女の子から女に変る。

 

赤い唇を閉じて、わたしに顔を近づけて、静かに

眼を閉じて、唇をすぼめて突きだす。わたしに何

かの行動を求めてということは起こらなかった。

そのときは、ただ、それだけのことだった。

 

それだけのことだったが、それでもわたしの心拍
数は急上昇した。ドキドキが、ロマンチックが止

まらない。19歳の浪人生、恋の弾丸スタート。

一方の彼女の方は凍らせた豆腐みたいに冷静だった。
国際空港の手荷物検査員のような目をしていた。

 

わたしの目の中に、彼女の探しているものが、本当
にあるのか、ないのかを確かめている様子だった。
さながら「わたしの御眼鏡にかなうかどうか、思案
中よ!」といったところか。


わたしは、彼女の次の言葉を待っていたが、昭和の
アイドル歌手みたいに、おざなりの小さな微笑みを
浮かべるだけだった。

13時予備校の恋

13時予備校の恋

 

西友の前で20分間、私の首は左右に揺れ続けた
。約束の時間から10分遅れて、彼女は表れた。

プーチン大統領のように堂々と遅れてやってき
た。美しい胸の曲線の彼女は甘く微笑んでいた。

 

「待った?遅れてごめんね」と言ったが、ゴメ
ンの顔ではない。「見ての通りだよ。待ったに
決まっている」と言いたかったが言わなかった。

わたしは「いや、ちょっと前に来たから」と小
さな嘘をついた。相変らず嘘の多い男なのだ。

 

彼女は3僂世艶く。反応はそれだけだった。
あとは何も言わなかった。次はわたしから何か
を言わなければいけないと思ったら、口から言
葉がポロッと出てきた。

 

「買物って西友なの?」と尋ねた。彼女の手が
マジックの小鳩みたいに、サッと飛び出てきた。

彼女は手首を回して手の平をヒラヒラさせた。腱
鞘炎のリハビリ運動を教える理学療法士のように。

彼女は「それ、違うの!」と言った。まるで、わ
たしの方が勘違いしているような言い方だった。

 

「今日は買物しなくて良くなったの」と言い、三

日月みたいに怪しい笑顔を意味ありげに浮かべた。

少し憎たらしいけど可愛いと思った。「(宿題はな
かったのに)宿題終わったわ。お母さん、おやつ
頂戴よ!」しれっと嘘を言う小娘のようだった。

13時予備校の恋

13時予備校の恋

「特に予定はないから別に良いよ!」
わざと無表情を顔に貼りつけて言った。

彼女もまた、まったく負けていなかった。

 

20分後に西友の前で!」唸るよう
に彼女は言った。単なる伝言みたいに。

恋する乙女の笑顔、振り向き、後ろ髪も
ない。「そうですか、他に用はありません」
職務質問の巡査並みにサバサバした顔し
て、彼女はサッサと教室を出て行った。

ほんの10秒くらいのことだ。微かなエメロ
ンリンスの香りだけを微かに残して去った。


まるで敗戦を通知された国民みたいに、教
室は水を打ったように落胆の静寂に包まれた。

不思議と不可解が交じり合い、ぶつかりあい
、接着と反発を繰り返した。私に余韻に浸る
時間はなかった。今は、とにかく西友なのだ。

競歩みたいな歩き方で10分後に西友に到着
した。彼女は店内にも店外にも見当たらない。

安物だけど時間の正確さだけが取り柄のカシ
オのデジタル腕時計をわたしは39回確認した。

西友の前で20分間、私の首は左右に揺れ続けた
。約束の時間から10分遅れて、彼女は表れた。

プーチン大統領のように堂々と遅れてやってき
た。美しい胸の曲線の彼女は甘く微笑んでいた。

13時予備校の恋

13時予備校の恋

北関東の開業医の一人娘で、世田谷区の
女子専用高級マンションに住む容姿端麗
のお嬢様からの、ローマの休日みたいに
告白のない告白(お誘い)だったのだ。

 

オードリヘップバーンであれ、北関東の
御嬢さんであれ、美女からの告白ほど嬉
しいものはない。極上の料理を目の前に
した時のように、私は極上の気分だった。

「恋は突然」については、誰かにいちい
ち説明されなくても分かっていた。「恋は
盲目」それも然り、充分に分かっていた。
知識としても、経験としても。

しかし、彼女の行動は晩夏の落雷のよう
に、あまりにも唐突で強烈だった。

恋が成就すれば良いが、そうでない場合
は、同じクラスの二人は気まずくなる。

失恋も覚悟だったか、それとも勝算あり
きの自信満々だったか、その辺りの彼女
の気持ち(本心)までは分からなかった。


「これから買物につきあってくれる?」

 

とにかく彼女の問に答えなければいけな
かった。わたしは、間髪入れずに答えた。

「特に予定はないから別に良いよ!」
わざと無表情を顔に貼りつけて言った。

彼女もまた、まったく負けていなかった。

13時予備校の恋

13時予備校の恋

そういうところは彼女の強みであり、弱み
でもあり、類まれな魅力と魔力でもあった。

恋の魔術を得意とする魔女のように。

 

彼女からの申し出(買物)はお願いのよ
うだったが、さも当然の響きも含んでいた。
または暗に含ませた。意図的に、確信的に。

何でもないことを頼みながら、その実は
命令、つまり強制的なお願いだった。

「そこにある、それ、私のカバン、ちょ
っと取ってくれる」という感じである。

 

嫌とは言えない。わたしは、まるで服従を
余儀なくされた気の弱い兵隊のようだった。


彼女の言動と行動、その積極性、その果敢
さは嬉しかったが、同時に大いに面食らった。


「こんにちは」と手を差し出したら、いきな
り背負い投げでドスンと投げられたように。

文句なしのパーフェクトな1本だ。

 

彼女から誘ってきた。買物は方便だった。

背負い投げ1本は彼女からの告白だった。

北関東の開業医の一人娘で、世田谷区の
女子専用高級マンションに住む容姿端麗
のお嬢様からの、ローマの休日みたいに
告白のない告白(お誘い)だったのだ。

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