13時予備校の恋

その日の彼女は前から2番目に座っていた。ほとんどいつも
2列目の真ん中に座った。そこがまるで、東京ドームの年間
シートを購入したかのように、我が物顔で堂々と座っていた。

彼女のサラサラした黒髪は肩に届くか届かないか、夏色の
ナンシーの早見優のように、頭部には天使の輪が輝いていた。
早見優より可愛くなかったが、早見優より彼女は美人だった。

彼女の瞳は可愛いミツバチのように可愛かったが、その一方
で働き蜂のような芯の強さを感じさせた。「絶対に2浪はし
ないから!」と瞳が無言で叫んでいた。

高島屋とか、三越とか、伊勢丹でしか買えないような上質な
カシミアのセーターと清楚で上品なスカートは、彼女の為に
特別に仕立てられたオーダーメイドのように見えた。

身長は155僂らい。身体は細くもなく太くもなく、それで
いてカルメンのような情熱が秘められているように感じた理
由は、ミツバチの瞳と小さくない形の良いバストだった。

彼女は年齢よりしっとりとして落ち着いて見えた。

竹下通りでクレープの食べ歩きではなく、ルノアールで紅茶、
ミニではなくロングスカート、コーラよりポンジュース、夏
より秋、アメリカよりイギリス、味噌らーめんよりタンメン
が好きよ!というイメージだった。

街中で声を掛けたら「わたしはそんない軽い女じゃないわ!」
と言わんばかりにジロッと睨むか、無視をするタイプだ。

「明日はどうやって学力を伸ばそうか?」彼女は考えるが
、わたしの思考は「今日はどうやって時間を潰そうか」。