13時予備校の恋

 

何故?わたしは空き箱みたいに空っぽだ
った。他に得意なことなんて何もなかった。

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人で遊ぶこと、1人だけ勉強しないこ
と、どちらもわたしは、恐れていたのだ。

 

かけがえのない一年、特別で稀有な青春
時代を共有した仲間たち。森田公一とト
ップギャラン、プリンセスプリンセス。

 

光陰矢の如し。昔の若者たちは酒を酌み
交わし、疲れた笑顔で当時を振り返る。
ブラックに近いグレーだけどゴールド。
キラキラした繊細な若者だけが感じる
ピカピカしたダイヤモンドの一年間。

しかし当時は浪人生。右か左、下か底か
の岐路に立つ。ダイヤモンドなんて戯言
は通用しない。大人と計算高い賢者には。

浪人生は勉強と我慢を学ぶが、それでも多
感な人間だ。クラス内の狭い世界の噂、浪
人生の恋には、とりわけ敏感で過敏だった。
偏差値動向と同様、あるいはそれ以上に。

狂乱の平成が始まる10年程前は、ピッチも
スマホはない。メールもない。彼女への連絡
10円玉を数個握り公衆電話へ走った時代。

ところが、クラスの噂はグループLINE
のように、だれもが詳細に共有していた。

予備校通いが半年過ぎた9月、クラスにベ
ルリンの壁が構築された。絶望的な遮断壁。