13時予備校の恋(21

 

わたしの目の中に、彼女の探しているものが、本当
にあるのか、ないのかを確かめている様子だった。
さながら「わたしの御眼鏡にかなうかどうか、思案
中よ!」といったところか。


わたしは、彼女の次の言葉を待っていたが、昭和の
アイドル歌手みたいに、おざなりの小さな微笑みを
浮かべるだけだった。

 

甘くて無口なシュクリームみたいに、彼女は何も言
わないまま、数秒間の間があった。私はドキドキして
ジリジリした。試験開始の声を待っているように。

わたしは先に根負けする。「では、ど、どこかにお茶
飲みに行こうか?」喉の奥の方から懸命に言葉を絞り
だした。頼りなくて情けなくて女々しい声だった。

それでも彼女はすぐに反応する。「そうね!」高級な
真珠みたいに、瞳をキラリと一瞬だけ輝かせた。

いま、あなたは緊張して、それを隠そうとしている。
いいわ、あなたの動揺に気が付かない振りをしてあ
げるわ!という含んだ笑いをしながら「そうね、そ
れでもいいわ」赤い唇は、わたしに囁きかけた。

いままで話をしなかった彼女と、こうしてほとんど
初めて、まともに会話をした。彼女の魅力はいつも
通りだったが、わたしはいつも通りにヘタレだった。

 

心と身体はブラックホールに吸い込まれるように一
気に持っていかれそうだった。それは心地よかった。
それでも良い。いや、それが良いと思った。

その一方で何かがおかしい、何かが違うとも感じた。