13時予備校の恋(22

 

心と身体はブラックホールに吸い込まれるように一
気に持っていかれそうだった。それは心地よかった。
それでも良い。いや、それが良いと思った。


その一方で何かがおかしい、何かが違うとも感じた。

 

わたしから誘いだした時に答える、彼女の言い草な
のだ。間違いなく、誘ったのは彼女なのに。


私はそれでも良かった。不満はない。これから悩み

多き浪人生の新しい恋が始まろうとしていた。そん

なときに、そんなことはどうでも良いことだった。

「じゃあ行こうか(喫茶店)」と促すと、彼女は分

かったわ!という顔で頷いた。二人は歩き出した。


高田馬場の西友から喫茶店までが、わたしと彼女が初
めて一緒に歩いた道だった。


夕方の粘り強い太陽は、建物の隙間を見つけ出しては
歩道を歩く思慮の浅い人、空腹な人、動揺が隠せない

若者たちに、眩しい西日を照射して大いに喜んでいた。

しかし、いくら太陽が頑張ったところで残暑は残暑、

回転寿司は回転寿司だ。サーモンとマグロが違うよ

うに、あるいは急須で淹れた2回目のお茶のように、
秋の浸蝕が開始した残暑は本物の夏とは言えない。

わたしは急に切なくなる。まるで、楽しみにしてい
た連続ドラマが録画切れだったときの気分だった。

今年の残暑は短い。そしてまた秋も短い。冬は駆け足
でやってくる。おそらく恐ろしく寒い冬になるだろう。

2回目の大学受験は、あっという間にやってくるのだ。