13時予備校の恋(34

 

「具体的にどういう遊びをしてきたか、どういう女性

と付き合ってきたか、そこまでは詳しくは分からないわ」

楊枝入れから1本抜き取る時のように、そんなことは

どうでも良いのよ!という顔をして洋子は話を続ける。

 

「そういうことは別に良いの。そんなには興味がないから」

 

何を言いたいのだろう?不安の雨雲が広がる。

 

「私(洋子)は分からない。だけど分かっている」

洋子の顔が突然キリッと険しくなる。プライドを知らし
めるときに、気持ちを引っ張り出す女の情念顔である。

 

「なにがって?わたしは違う。そういうのとは違うから。

あなたがディスコで遊んできた女と……わたしは違うわ」

 

洋子はそこまで言うと、自分の言葉を空中にフワッと

漂わせた。それを目で確認してからパタッと沈黙した。

 

「空中の言葉をしっかり見て確認しなさい」命令(警告)

する交通警察官の険しい顔だったが、その唇の両端には、

満足したときの緩やかな緩みが僅かに浮かんでいた。

 

わたしは蚊の鳴くような声で喉の奥から「うん」という
単語をなんとか引っ張りだした。微力ながら努力した。

しかし洋子は、その程度の反応では満足しなかった。

言い足りないのか、若きエネルギーをもて余している

のか、単に話し好きなのか。

ゴジラが青白い火炎放射を吐くみたいに、熱える声を
勢いよく吹きかけてきた。