13時予備校の恋(35

 

言い足りないのか、若きエネルギーをもて余している

のか、単に話し好きなのか。

ゴジラが青白い火炎放射を吐くみたいに、熱える声を
勢いよく吹きかけてきた。

 

「私は軽い女、つまりちょっと声をかけてすぐに付いて

行く女じゃない。頭は良くないけど馬鹿じゃないから」

わたしの身体は理想の死後硬直の如く、完全に固まる。

 

洋子は5秒間、厳しい顔をしていたが、マフラーを不正
改造したバイクのけたたましい大音量が地響きのように
店内を振動させた時に、ハッと驚いた顔になった。

 

いつのまにか宇宙に飛び出したことに洋子は気が付いた。

 

それで、洋子は我に帰った。地球に帰還した。

 

自分の言葉のトゲに洋子は気が付いたのかもしれない。

または、わたしの顔の引き攣り(歪み)を見て、山里
亮太のように幸福な男に見えなかったのかもしれない。

あるいは気持ちが入り過ぎて疲れただけかもしれない。

押した波が引いて行くように、洋子の表情はスッと
軟化した。マショマロみたいに人工的に柔らかくした
甘い声を選択した洋子は、それを使ってこう言った。

 

「つまり、わたしは話の短くて簡単な女ではないの。
だって、わたしの話(説明、忠告?)は長いでしょう」
と言った洋子の表情は、高貴で優雅そうに見えた。

英国の競馬場の華やかな帽子を被った貴婦人のように。